2016年7月11日月曜日

バイオガスブームのあやうさ・・バイオガス電力は農業地域の利益に

バイオガス電力は究極の六次産業品
地域の家畜糞尿を利用するバイオガスプラントは農村地帯の畜産糞尿処理の軽減や地下水や河川汚染を防止し、悪臭をなくすなどの農村で生計を営む条件の改善をはかることができる。その上、嫌気性発酵によりメタンガスを発生させたあとに残る消化液は液体の肥料として稲作や畑作に使用することができる。

16基が廃棄・撤退
近年バイオガスプラントに取り組む理由に「売電」が出てきた。かつては、バイオガスによる売電価格はガスエンジンの修理代にもならないことことから、発電機を装備しないバイオガスプラントも多かった。そのせいとは限らないが、平成21年から22年にかけてバイオガスプラント着工がゼロになり、実験終了、事業撤退などの理由により16基も廃止・撤去されている。

日本の飼養形態にアジャストする難しさ
国内建設業、酪農施設業が中心となりヨーロッパのバイオガスメーカーと提携し、日本での技術を展開しようとしていたが、日本の乳牛や養豚の飼養形態に合わせることはなかなかに難しく、1年以上もしくは数年にわたり実験事業的な状態がつづき修理・改造の連続に体力のないプラントメーカーは撤退を余儀なくされのだろう。

地域の酪農・農業をよく知ることが重要
そのなかでも、成功を収めていったメーカーは、地域農業をしっている酪農機械の設備会社である。ヨーロッパから移入されたバイオガス技術は当初豚糞を中心とした施設であったため、ワラなどの混入に繊細であった。また、廃棄物処理から派生した技術も農業廃棄物の特性を把握しきれず撤去されたプラントもあった。

地域の仕組みの重要性
このような試行錯誤をへて現在北海道には80基の施設があり、現在では安定的に稼働している。海外の技術を地域事情にあわせて改良されていった。「美しい農村」をつくりだす行政施策で取り組んだり、農業者は糞尿処理コスト軽減、スラリーを消化液に変えて有効利用することを目的に取り組み、それを畑作農家が化学肥料低減を目的に消化液散布をおこなうなど地域あげての取り組みが功を奏している。

農村FIT電力事業は究極の六次化製品
このような、地域の仕組み作りからうまれるバイオガスFIT電力は、全国だれでも購入できる六次化製品である。自治体・畜産酪農・畑作などの担い手が連営して作った電力を利用するだけで日本の食料生産や農村の活性化に貢献することができるのだ。農村の道の駅に出かけて野菜を買うことの出来ない人たちも、テレビをつけると農村に貢献することができる。

畜産糞尿のFIT電力の補助金は農村のための収入
税金が投入されて、買い取られるFIT電力の恩恵は日本の農業事情を改善しようとする農村の活動に与えられる。近年、海外ファンドと首都圏大企業の太陽光発電会社、ヨーロッパのバイオガスメーカーの組合せで、畜産バイオガスビジネスを田舎に仕掛けている例が多くなっている。この組合せでは地域農業をしるよしもなく、地域課題の解決とは関係のない発電ビジネスが実行される。また、プラント技術の地域へのアジャストも20年前〜10年前の試行錯誤に逆戻りする可能性さえある。
FIT電力は20年間、税金が投入される買い取り価格が決められているが、そのメリットの受取り手が地域外、国外の事業者になってしまうことに危惧を感じている。畜産糞尿や食品廃棄物などの地域のゴミを工夫して得られるFIT電力の収入は、地域農業者、地域建設業、地域金融機関が参加する「地域電力」の収入として、全国の消費者に購入してもらうことが最重要である。

バイオガス地域システム
高齢化対策や後継者確保、若年新規参入などを推進した地域にとって、労力・臭気・肥料コスト低減をはかり、付加価値・ブランド・収益を向上させるバイオガスは農村みずからの手により考えられ実行されるべきである。農村地域活性化の最後の残された資源である、豊富な有機廃棄物から得られる電力・肥料・ガスを賢くつかって、地域による電力ビジネス、熱利用での雇用確保、化学肥料削減の低コストとブランド力向上に活用する仕組みを作り上げたい。

2016年2月21日日曜日

日本ロングトレイル協会設立!

地方創生というあたらしい言葉とキャッチーなイベントが主流になり、実になる方策がすくないと感じられます。なかでも観光事業に対して新しい視点という取り組みが盛んですが、地方ではすでに多くの取り組みが行われています。
そのような取り組みの経過と結果を顧みることなく、アイディア勝負になっていること残念と感じます。過日の帯広市の取り組み発表でも革新性は見当たらないものの、市長の「主体性ある事業者」の育成を強調していたことは好感がもてます。

十勝にはすでに平成3年には「十勝アウトドアネットワーク」があり、ファームイン研究会などが活発に開催されて現在の十勝をかたちづくっています。また、フードスタジアムという、農家(生産者)、レストラン、消費者があつまって十勝の食についてかたる運動も行われていました。

食と農業、自然環境に関わる取り組みが「観光」の中心になって行きそうです。十勝ロングトレイルは3泊4日で100km歩く旅として食にも大変こだわり地域の食材をあつめてオリジナルメニューを作成・提供しています。

ロングトレイルに関わる発端は十勝をアウトドア観光の拠点にしようという動きがありました。民間会社が資金をだして、農家民宿や、アウトドア活動、自然ガイドを育て、連携をすすめて十勝観光の新しい動きを創り出す十勝コーディネイトセンター構想が平成9年くらいにありました。
当時は旅行会社のパック旅行が主流でしたが、十勝では十勝馬の道構想やサイクリングの道、スカイスポーツ、オートキャンプなどのオートリゾートなどが花盛りでした。
十勝の体験情報、自然情報、宿泊情報やおもしろい人材の情報を一カ所にあつめようということで「十勝コーディネイトセンター」を開設しました(一時的に)
その後、士幌高原道の建設中止にかわる北十勝振興策としてヌプカの里、然別湖を連携する構想や(後日、北海道アウトドア資格制度に発展した)、士幌のバイオガス構想、上士幌町の環境構想などが創られました。
そのころ、中村達さんが十勝アウトドアネットワークの求めに応じていただき、数回十勝に来ていただいたことがきっかけでした。
中村さんはその後「アウトドア産業教育研究会」「日本ロングトレイル推進協議会」をへて今回のNPO設立となりました。その間20年くらいのお付き合いです。
今回の日本ロングトレイル協会には日本山岳ガイド協会や日本山岳会などそうそうたるメンバーが参加して設立されました。また副理事長に北根室ランチウェイの佐伯さん、理事に菊池が参加していることから、このネットワークを北海道の歩く旅に有効に活用したいと思っています。

2016年1月27日水曜日

農村活性化の課題は国境もないのだ。

 4年前からバイオガスの普及をVietnamでもおこなう活動を進めています。
Vietnamでも乳牛を飲むようになっており、現在の数倍という乳製品普及の目標数値もあります。一方で汚水・排水処理技術は普及していず、また化学肥料が標準施肥量よりずっと多く大量投入されています。

バイオガスでエネルギーをつくり消化液を利用する地域開発として一昨年はベトナム農業省とハノイで「バイオマスワークショップ」を開催しました。その際にホーチミン市農業ハイテクパーク研究所、資源環境大学(ホーチミン市)、ハノイ農業大学(ハノイ市)、乳業会社、大手ゼネコンの5社とMOUを結んで情報交換してきました。今回はさらに防衛省傘下のタイソングループのタイソン社と情報交換と貿易事業やシンクタンク事業などの具体的成果にむけてMOUを結びました。

タイソングループには研究所、病院、高齢者施設など多様な企業群を抱えています。対応する日本企業の情報を提供していきたいと思います。














農村にはタテワリがないはず・・農村にある資源が連携する構図


農村には牛がいて牧場があり、林や森があり、お米や野菜が作られています。その担い手は林業者や酪農業などの事業の特徴ごとにジャンル分けされますが、農村の生活が分けられていません。そこで、資源を横断的に有効利用して、最大の利益(農村にとって)で地域に雇用が生み出せるはず。と考えて、森のエネルギー研究所の大場社長と相互に情報を共有して地域づくりを活発化させようと意気投合しました。

木質バイオマス、畜産バイオマスなどいろいろな呼び名がありますが、地域に熱と電力を生み出して活用することにおいては何の垣根もありません。農村にあり活性化につながるモノは何でも使う、そのための知見の集積です。

このような志の事業体が集結できると地域におもしろいことがおきます。


 笑いがひきつっている菊池
http://www.tokachi.co.jp/news/201601/20160126-0022833.php

2016年1月16日土曜日

バイオガスが夢見る地方創生

バイオガスプラントは農村資源を循環させて、地域に雇用をとどめるための優秀なツールです。
耕畜連携・・邪魔な畜産糞尿を嫌気発酵させて液肥にすることで畑作農家の化学肥料を低減することができるので、糞尿処理コストと畑作での化学肥料購入コストが下がります。
健康な牛・・消化液を利用した牧草は牛の健康を維持すると評判です。乳脂肪分の向上や薬品利用の減少、お産回数の増加などに効果が見られます。粗飼料の収量もアップします。
環境保全・・消化液散布時の臭気がスラリーの1/4以下に減少します。また、密閉容器で発酵させるため(嫌気性発酵)処理時の臭いもありません。
共同処理・・鹿追町や別海町、興部町のような共同処理型では、小規模酪農家もバイオガスプラントの恩恵に与ることが出来ます。
熱利用 ・・膨大に発生する「熱エネルギー」を利用してハウスや植物工場のエネルギーとして利用することが出来ます。鹿追町ではマンゴー栽培やチョウザメ養殖をしています。
発電事業・・これらの事業の推進力となるのが発電事業収入です。農村で解決しなければならない課題を「ソーシャルビジネス」的に解決、雇用を作ります。

最近の私の講演の最後に利用するイラストです。
酪農家の糞尿→バイオガスプラント→有機肥料散布→有機イチゴ、有機ミルク→熱利用(ビニールハウスなど)での高齢者・障害者雇用→有機農産物販売と商店街振興→大学・研究機関との連携→臭気のない農村での農業観光(ロングトレイル、障害者ツアーなど)

昨年、宝島旅行社、共働学舎、イルピーノ、NPOあうるずと一緒に作成しました。
地域の地方創生計画を実行するためには、観光や六次産業化、デザインブランド、食メニュー開発、バイオマス利用技術を「生業」としているソーシャルビジネス的企業との連携が必要ではないかとのご提案です。

地域毎にこのような地域づくりを考えるコミュニティシンクタンクがあれば行政と住民の連携がすすみます。

社会的課題をビジネス的手法で解決するソーシャルビジネス手法は地域に必要な取り組みだと思います。









家畜バイオガスビジネスの考え方

家畜バイオガスビジネスの考え方

 「家畜バイオガスビジネスプラットフォーム」は農村で処理に困った家畜糞尿処理を行い、有効な消化液を生産する際に出てくるエネルギー(バイオガス、熱)を利用して高齢化、後継者不足、雇用減少など農村地域の課題を解決するビジネス手法を研究する。
 普及啓発・情報交換の段階から、バイオガスビジネスマッチングを進めるプラットフォームと、バイオガスビジネスを推進する事業体の開設に向けた研究会を開設する。

「家畜」という言葉を使用しているのは「農村」を意味している。家畜以外の農村のバイオガス資源もあるが、ここでは食品残渣や生ゴミと区別して農村振興に資する・・という意味で使用した。
「農村」が農業・食品を生産する風上にあり、食料生産をおこなった最終資源としてのバイオガス事業のことを意識している。六次産業化などの食品・農村観光などの商品に加えて「国産食料をつくる苦労の電力」という新しい商品開発である。

また「ビジネス」としているのは、バイオガスを中心に考えられる各種の効果を持続させるためにはボランティアではなく地域の生業として取り組むことを意味している。
地域の資源を地域で使い、雇用を生んでコミュニティを維持していくためのビジネスである。バイオガス事業は地域資源の循環事業であり、プラントは心臓部にあたる。心臓だけの身体が存在しないように、プラント部だけでは地域循環は果たせない。消化液利用や熱利用、農業コントラクターなどの視点が不可欠である。

 家畜糞尿解決や有機農業、六次産業化を進めるための多様な知見と資金確保、運営組織などの農村ビジネスモデルを研究・提案する。

A.バイオガス事業が求められる背景
 1.バイオガスブームの再来
 再生可能エネルギーのうち安定的な電源であるとして畜産系バイオガスへの注目度がアップしている。バイオガスは戦後に何度目かのブームを向かえている。石油ショック後のブームなどエネルギー事情により揺れ動いてきた歴史がある。しかし、エネルギー事情という外部環境により忘れられた技術であるが、近年は固定価格買取(FIT)制度により新しいブームが到来している。
既に鹿追町や士幌町など先駆的な自治体では成功しており、農業分野の課題を解決する手法として導入がすすめられ、北海道では現在は60基以上が稼働している。これらの成功は外部のエネルギー価格の高騰・低廉に依存するモノであってはならない。
地域に生きる農業に不可欠な取り組みとして自発的・自立的に進めることが重要である


 2.バイオガス推進に不可欠な視点
 バイオガス事業は農村で処理に困っている家畜糞尿などの有機廃棄物(バイオマス)を利用して、換金が可能なエネルギーを創出すると同時に、農村で利用されている化学肥料を有機肥料に置き換えることで各分野のコスト低減、労力低減、高付加価値有機農業、六次産業化により地域に活力を与える仕組みである。
高齢化対策  家畜糞尿処理作業の大幅な軽減。
居住環境改善 臭気や地下水・河川への影響軽減。
有機肥料生産 消化液と堆肥の組合せと畑作農家との連携により有機栽培に発展する。
エネルギー  FITにより売電収入が得られ、農業地帯の「裏作電力」となる。
熱利用    ガス燃焼、エンジン廃熱の回収によりハウス栽培など六次化を促進。

 3.バイオガスの多様な可能性と総合マネージメント
 バイオガスの多様な可能性を実現するためには、地域の課題解決に向けた情報共有が重要であるため、全体をマネージメントできる体制が必要である。従来は自治体やJAによる取組みが中心であったが、今後は地域農業と政策を理解した第3極の形成がビジネス的視点で運営する体制が求められる。


4.地域バイオガスビジネスの推進ステップ
コンセンサス形成
 バイオガス事業が地域酪農の維持に大きな効果があることや、地域で生活し続ける農業者の将来像を描くために「地域共通認識」の共有を、酪農家や畑作農家、行政やJAなどと共有。
最適なバイオガス利用のコンサルティング
 家畜糞尿の分布や営農形態により「集中型」「個別型」「組み合わせ」などのプラント技術や売電、自家利用、ガス利用、熱利用などエネルギー利用、糞尿収集・消化液の活用方法などの最適化。
地域ビジネス化に向けた提案・評価
 担い手事業者(売電、糞尿処理、プラント管理)に向けたビジネススキームの提案、政策との連携と補助金の導入、売電ビジネス調査、スマートグリッド調査をおこなう。地域での持続的な経営を実現するビジネスモデル評価をおこなう。
資金調達
 導入部では各省庁のFS調査などを活用し、ビジネス化に対しては「家畜糞尿処理と消化液散布」、FITや地域スマートグリッドによる「売電事業」、熱利用によるハウス栽培など「六次産業化」など対応する各種の制度資金の活用や、金融機関によるプロジェクト・コーポレイト
ファイナンス及びファンドの組成を提案する。
雇用と人材教育
 家畜糞尿処理に発する「家畜バイオガスビジネス」により地域での雇用を確保し、その雇用者自信が地方創生の中核として活躍できるように人材教育を行う。

5.ビジネス化にむけたプラットフォームの形成
 バイオガスの検討会議は1998年に十勝バイオガスプラント研究会、翌年北海道バイオガス研究会が立ち上がっている。主に行政機関、大学と民間企業がバイオガスに関する普及・啓発・情報交換などを目的としている。
「家畜バイオマスビジネスLAB」は一歩進んだビジネス化を目的とした技術導入、組織形態、ファイナンス等について検討する。
・北海道の家畜バイオガスプラントを中心としたビジネス事業を推進するプラットフォーム
・バイオガスを核とした地域ビジネスを検討したい自治体、JA、民間会社、金融機関等
・地域のバイオガスビジネスニーズに対応し、地域特性に応じたビジネスモデル支援

・事務局は北海道バイオマスリサーチが担当

2015年7月1日水曜日

バイオガスで社会連帯経済

ソーシャルファームジャパンサミットinびわ湖を無事に終えることができました。滋賀県のガンバカンパニーの中崎さんのネットワークで昨年の250名を超える330名の来場者があり、また翌日の栗東市の「おもや」への視察も丁寧で暖かいスタッフの皆さんのお迎えで気持ちよく視察できました。また、「おもや」の自然栽培のランチも美味しかった。

今回のサミットでは飛び入りの大物がいました。
私と一緒に写っているソテールさんはフランス1990年代にフランスの大臣を歴任し、ダイアモンド社でも「元フランス経済・財政・産業大臣クリスチャン・ソテール氏に聞く」という記事が掲載されています。

ジャルダン・ド・コカーニュのヘンケル氏の出身地のプザンソン地域は「貧困と社会」をテーマに考える人達を輩出しています。当時は空想的社会主義とよばれたフーリエやマルクスに批判されたプルードンもプザンソン出身です。

耕作放棄地(農業)と失業者の救済(福祉)という異なる課題を「有機農業」を消費者に直接売ることで解決しようとしたヘンケル氏の考えはこのような背景が影響しているかもしれません。

耕作放棄地5haで5000万の有機農産物の売り上げを300世帯が支えているジャルダン・ド・コカーニュの仕組みは、すでにフランス全土で135カ所にも波及しています。雇用されにくい人達に訓練や就職指導、ハローワークのような仕事紹介もしているために行政からも多くの支援が入っています。そのおかげで、社会的弱者を支援する次世代を担う若いスタッフが参画しています。それも一流大学出身の高学歴な人々が参加しています。

日本とくに地方ではこのような取り組みはボランティア・慈善事業としてとらえられることが多いのですが、ボランティアでは生計が立たないため持続させることが出来ません。
これからは、社会の弱いところとつよいところが組み合って、相互補完するような仕組みが望まれています。

それが、ソテールさんのいう「社会連帯経済」です。私は学部は立命館大学の産業社会学部だったために多少の聞き覚えがある・・という程度でした。今回ソテールさんのお話しを聞かせてもらいました。ラッキーなことにシンポジウムの前夜は飲み会にまでつきあってもらいました。

私が考えていたバイオガスから始まる地方活性化は「社会連帯経済」なのだと気がつきました。下記にそのイラストを掲載しておきます。

田舎の酪農業にとって畜産糞尿処理は高齢化が進む酪農家にとっては頭の痛い問題です。
多くの時間がかかり、重労働でコストがかさむという三重苦の作業です。製品としての牛乳は1L200円以下で、ペットボトルのミネラルウォーター(500ml120円)より安いのが現状です。そのうえ、原料の牛乳を出荷した後に残る糞尿は河川汚染や臭気などの大気汚染の元凶として嫌われます。適正な処理コストも出ないでしょう。

糞尿からバイオガスを取り出して電力や熱エネルギーとして販売することは、一般市民がいつも必要としているモノに変換することにより、間接的に酪農家を支援することになります。発送電分離が成立するとこの構図は一層加速します。

一方、バイオガスからは有機肥料もできます。北海道の鹿追町ではこの肥料を「道の駅」で販売しています。販売員の方にお聴きすると売れてますとの答えでした。
この消化液で生産された「有機農産物」を購入すると、小規模で有機農業を始めた畑作農家や高齢化した酪農家を支援することになります。

また、このような活動が地域の付加価値を高めて全国に仲間を作り出すことになります。
私はこれが「地方創生」だと思っています。地方創生の戦略という「書類づくり」にきゅうきゅうとなり、裏付けとなる地域での活動がおろそかだと、おそらく地方創生にならないでしょう。

社会連帯経済はフランスをはじめとして世界で取り組まれています。フェアトレードやNPO、有機農業、貧困対策などがキーワードとしてあげられます。昨年末に地方創生のために私が書いた(書いてもらった)イラストは「社会連帯経済」だったようです。

今回のソーシャルファームサミットではそのような仲間が沢山来てくれてました。しかもみんな若い。日本の将来は明るいぞ!と感じられる集まりでした。
今年が素晴らしいので、来年の人にプレッシャがかからないように少し「仕様」を整理して次の開催地を考えようと思います。









2014年9月6日土曜日

バイオマス活用で地域再生

太陽光発電や風力発電は「装置型再生可能エネルギー」であり、補助金をうけて装置を導入・建設したあとは地域の活力増強となる事業は最小限のメンテナンス事業が残るだけである。 私たちが1997年にバイオマスに着目し、鹿追町、士幌町など自治体と酪農機械、建設会社、農機具会社、設備会社と連携し、産業クラスターとして「十勝型バイオガスプラント研究会」を設立した。

 家畜糞尿は「再生可能エネルギー発電」「有機肥料(化学肥料低減)」「農産物価値向上」「再生可能エネルギーで加工」「付加価値販売」「ニート、母子家庭、出所者など社会的弱者雇用」「消費者との販売・余暇交流」など農村の得意とする分野の花を咲かすことができる地方に残された「最後の資源」である。

 そのためには、多少面倒ではあるが前述したような、地方の事業者が組み合って持続可能な事業として取り組むことが必要である。それらを支える仕組みには電力価格(政策)、有機肥料散布事業(コントラクター)、有機農産物(畑作事業者)、特産品加工(弱者施設など)裾野を広げることが必要となる。

 バイオマスエネルギーがブームになりつつあり、新電力会社がバイオマスエネルギー源としてバイオガスプラントの電力買い取り、バイオガスプラント建設への出資を申し出る状況になっている。海外からのバイオマスを輸入して発電する事業や、畜産糞尿のメタン発酵発電能力だけに着目した事業形態も見受けられるようになってきた。

 バイオマス「利用技術」と利用の「仕組み」、「目指す地域の姿」の研究と情報開示、検討が十分に行われることが重要だ。ともすれば「バイオマス利用」は「電力販売による利益獲得」の一側面からのみ取り組まれることになる。売電価格の下落により一喜一憂せずに、地域が責任をもって持続的な利用を続けたい。

 食料自給率40%の日本にあって、北海道には200%の生産物があり、加工品とその残渣がある。山にも海にもバイオマスは存在する。人が生活し、野山があり、動物を飼養飼養し続ける限り資源は枯渇しない。自らの地域がどのような未来を持つことができるのか「ほれぼれとする地域の未来」を描き出し、それを共有することから始めなければならない。

 バイオマス利用による収入の道は多様であるが、少しずつである。電気、肥料など価値の高いものとして売る工夫、科学的研究、ビジネスモデル研究をすすめ、バイオマスの換金能力を高めなくてはならない。

 北海道バイオマスリサーチとnpoあうるずでは、消化液の無臭化と施用試験(海外でも実施)、ソーシャルファームジャパン事務局とジャルダン・ド・コカーニュとの社会的弱者雇用シンポジウム、「十勝ロングトレイル」3泊4日で地域の食材をたべながら100km歩く農村の地産地消の旅、農産物の価値を高めるブランド化事業などを展開し、それぞれを有機的にむすぶ地域にあわせた「ほれぼれとしたビジョン」を作り出すために活動している。

2013年7月1日月曜日

十勝NPO連絡会

いろいろな動機で立ち上げたNPOが108団体あります。事実上の休止もふくめて余り活発ではない団体もあります。 各NPOに平均30人が参加しているとすると、3240人が関わっていることになります。でも、十勝36万人の3240人は0.9%にすぎません。 それぞれの世界で0.9%だけだと孤立して、はなかなか力を発揮しにくいとおもいます。 自分にはNPO仲間が3000人いる!と心強くなるような仕組みが今後10年かけてできるといいな、と思ってます。

2013年6月26日水曜日

とかちロングトレイル募集開始

今年もロングトレイル募集が始まりました。9月21日から24日の開催です。一日だけでも、参加できます。昨年からはLCCを利用して名古屋・関西からの若い女性の参加が突然増えました。現在はフードコーディネイターによる地産地消の食の会議・打ち合わせやルートの細部についての検討が進んでいます。
皆さん、十勝でお会いしましょう

2013年5月31日金曜日

農業デザイン 2006年7月記載

2007年に「東日本デザイン団体会議」を帯広で開催しました。この頃は「農業」と「デザイン」は全く別の分野と考えられていましたが、デザインで農業を振興する時がきたとかんがえて、シンポジウムをおこないました。
前年の2006年にかいた企画原案をご覧ください。

デザインで興す十勝・・・出直しデザインイヤー十勝
コミュニティシンクタンクあうるず 菊池貞雄

 大量生産時代が終わりを告げバブルの終焉も感じられた16年ほどまえに帯広十勝の地域づくりに大きなムーブメントがあった。「風土と建築を考える会」「プロジェクトあん」「プランAC」などの地域づくりグループが帯広の中心市街地や商店街振興に対する提案活動を中心に活動を行っていた。しかし、当時は変わり者から始まった地域を考える「街づくり活動」は、次第に広がりを見せるほどに行政仕切の地域づくり団体に変化していった。
時代は21世紀にかわり、20世紀には新鮮だった「活性化」「街づくり」「地域づくり」「農村景観」が陳腐な言葉となり、地域を考え活動する「引き金」になる言葉が失われている。

 地域活動の主体は「起業」にシフトされ、産業クラスターなど多様な産業づくりへの取り組みが進められた。しかし、製造の素材開発、製造方法の改善など要素部分は進展しているものの、販売方式やその商品の存在意義自体が不明確である製品も散見される。
今こそ、地域の産業活動にもう一度「デザイン」をもちこむムーブメントが必要だと考えている。いまはあたらしいムーブメントに発展している「地域ブランド」が一過性に現象におわらずに地域の文化に醸成していくためにも、デザインにより一層磨かれるため、デザイン思想を産業づくりに導入することが必要である。地域産業とデザイナーが連携する仕組みにより、地域の思想をもった「商品開発」をすすめて、地域に活力をあたえる。そのようなムーブメントを十勝からおこしたいと考えている。

コミュニティシンクタンクあうるずが交流を深めている武蔵野美術大学の宮島先生が宮城県のの佐藤氏が中心となっている「東日本デザイン団体会議」を帯広で開催するになり、これを契機に十勝にもう一度デザインムーブメントおこし、それにより全国の「地域振興とデザイ」ンの関わりを再確認する「出直しデザイン計画」を考える。
北海道の受け入れ態勢としては、事務局団体はコミュニティシンクタンクあうるず、とかち・帯広デザイン振興協議会、デザイナーズ協会で構成し、旭川・函館との3都市デザイン会議などと連携する。

東日本デザイン団体会議とは
1. 経過・・・東日本デザイン団体会議について
この会議は、宮城県産業デザイン交流会と山形県デザイン協会の関係者が発案され、平成11年より毎年開催されてきた。これまでの開催地は、仙台、山形、青森、燕三条(新潟)、小平(東京)、甲府、仙台である。
参加者はデザインに関わる官民の関係者で、デザイン振興を考えている行政的な視点も盛り込まれている。

2.十勝開催のコンセプト
十勝地域では大規模農業が展開されているため農協の大量農産物販売に頼った営農が行われおり、エンドユーザーの顔が見えにくい構造になっており。現代農業に求められている「顔の見える」感覚が十勝農業には稀薄である。
近年は素材生産から加工などの取り組みが行われており、ナチュラルチーズに代表される高付加価値農業製品が製造されている。このような付加価値的農業生産は農産物の加工技術指導は充実しているが、販売戦略などをふくめたデザイン指導が地方では不十分である。
十勝地域において本会議を開催する大きな意義の一つに「デザインによる成功事例」紹介や、デザインコンサルティングビジネスを示す「農業とデザインの融合」の必要性を提示したい。。

地方におけるモノづくりは素材と加工された「現物」が存在している強みにデザインを加えることにより、足腰のつよいユーザーに向けたもの作りを加えて全国の田舎にデザインによる可能性を提示したい。