2016年1月16日土曜日

家畜バイオガスビジネスの考え方

家畜バイオガスビジネスの考え方

 「家畜バイオガスビジネスプラットフォーム」は農村で処理に困った家畜糞尿処理を行い、有効な消化液を生産する際に出てくるエネルギー(バイオガス、熱)を利用して高齢化、後継者不足、雇用減少など農村地域の課題を解決するビジネス手法を研究する。
 普及啓発・情報交換の段階から、バイオガスビジネスマッチングを進めるプラットフォームと、バイオガスビジネスを推進する事業体の開設に向けた研究会を開設する。

「家畜」という言葉を使用しているのは「農村」を意味している。家畜以外の農村のバイオガス資源もあるが、ここでは食品残渣や生ゴミと区別して農村振興に資する・・という意味で使用した。
「農村」が農業・食品を生産する風上にあり、食料生産をおこなった最終資源としてのバイオガス事業のことを意識している。六次産業化などの食品・農村観光などの商品に加えて「国産食料をつくる苦労の電力」という新しい商品開発である。

また「ビジネス」としているのは、バイオガスを中心に考えられる各種の効果を持続させるためにはボランティアではなく地域の生業として取り組むことを意味している。
地域の資源を地域で使い、雇用を生んでコミュニティを維持していくためのビジネスである。バイオガス事業は地域資源の循環事業であり、プラントは心臓部にあたる。心臓だけの身体が存在しないように、プラント部だけでは地域循環は果たせない。消化液利用や熱利用、農業コントラクターなどの視点が不可欠である。

 家畜糞尿解決や有機農業、六次産業化を進めるための多様な知見と資金確保、運営組織などの農村ビジネスモデルを研究・提案する。

A.バイオガス事業が求められる背景
 1.バイオガスブームの再来
 再生可能エネルギーのうち安定的な電源であるとして畜産系バイオガスへの注目度がアップしている。バイオガスは戦後に何度目かのブームを向かえている。石油ショック後のブームなどエネルギー事情により揺れ動いてきた歴史がある。しかし、エネルギー事情という外部環境により忘れられた技術であるが、近年は固定価格買取(FIT)制度により新しいブームが到来している。
既に鹿追町や士幌町など先駆的な自治体では成功しており、農業分野の課題を解決する手法として導入がすすめられ、北海道では現在は60基以上が稼働している。これらの成功は外部のエネルギー価格の高騰・低廉に依存するモノであってはならない。
地域に生きる農業に不可欠な取り組みとして自発的・自立的に進めることが重要である


 2.バイオガス推進に不可欠な視点
 バイオガス事業は農村で処理に困っている家畜糞尿などの有機廃棄物(バイオマス)を利用して、換金が可能なエネルギーを創出すると同時に、農村で利用されている化学肥料を有機肥料に置き換えることで各分野のコスト低減、労力低減、高付加価値有機農業、六次産業化により地域に活力を与える仕組みである。
高齢化対策  家畜糞尿処理作業の大幅な軽減。
居住環境改善 臭気や地下水・河川への影響軽減。
有機肥料生産 消化液と堆肥の組合せと畑作農家との連携により有機栽培に発展する。
エネルギー  FITにより売電収入が得られ、農業地帯の「裏作電力」となる。
熱利用    ガス燃焼、エンジン廃熱の回収によりハウス栽培など六次化を促進。

 3.バイオガスの多様な可能性と総合マネージメント
 バイオガスの多様な可能性を実現するためには、地域の課題解決に向けた情報共有が重要であるため、全体をマネージメントできる体制が必要である。従来は自治体やJAによる取組みが中心であったが、今後は地域農業と政策を理解した第3極の形成がビジネス的視点で運営する体制が求められる。


4.地域バイオガスビジネスの推進ステップ
コンセンサス形成
 バイオガス事業が地域酪農の維持に大きな効果があることや、地域で生活し続ける農業者の将来像を描くために「地域共通認識」の共有を、酪農家や畑作農家、行政やJAなどと共有。
最適なバイオガス利用のコンサルティング
 家畜糞尿の分布や営農形態により「集中型」「個別型」「組み合わせ」などのプラント技術や売電、自家利用、ガス利用、熱利用などエネルギー利用、糞尿収集・消化液の活用方法などの最適化。
地域ビジネス化に向けた提案・評価
 担い手事業者(売電、糞尿処理、プラント管理)に向けたビジネススキームの提案、政策との連携と補助金の導入、売電ビジネス調査、スマートグリッド調査をおこなう。地域での持続的な経営を実現するビジネスモデル評価をおこなう。
資金調達
 導入部では各省庁のFS調査などを活用し、ビジネス化に対しては「家畜糞尿処理と消化液散布」、FITや地域スマートグリッドによる「売電事業」、熱利用によるハウス栽培など「六次産業化」など対応する各種の制度資金の活用や、金融機関によるプロジェクト・コーポレイト
ファイナンス及びファンドの組成を提案する。
雇用と人材教育
 家畜糞尿処理に発する「家畜バイオガスビジネス」により地域での雇用を確保し、その雇用者自信が地方創生の中核として活躍できるように人材教育を行う。

5.ビジネス化にむけたプラットフォームの形成
 バイオガスの検討会議は1998年に十勝バイオガスプラント研究会、翌年北海道バイオガス研究会が立ち上がっている。主に行政機関、大学と民間企業がバイオガスに関する普及・啓発・情報交換などを目的としている。
「家畜バイオマスビジネスLAB」は一歩進んだビジネス化を目的とした技術導入、組織形態、ファイナンス等について検討する。
・北海道の家畜バイオガスプラントを中心としたビジネス事業を推進するプラットフォーム
・バイオガスを核とした地域ビジネスを検討したい自治体、JA、民間会社、金融機関等
・地域のバイオガスビジネスニーズに対応し、地域特性に応じたビジネスモデル支援

・事務局は北海道バイオマスリサーチが担当

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