2016年1月27日水曜日

農村活性化の課題は国境もないのだ。

 4年前からバイオガスの普及をVietnamでもおこなう活動を進めています。
Vietnamでも乳牛を飲むようになっており、現在の数倍という乳製品普及の目標数値もあります。一方で汚水・排水処理技術は普及していず、また化学肥料が標準施肥量よりずっと多く大量投入されています。

バイオガスでエネルギーをつくり消化液を利用する地域開発として一昨年はベトナム農業省とハノイで「バイオマスワークショップ」を開催しました。その際にホーチミン市農業ハイテクパーク研究所、資源環境大学(ホーチミン市)、ハノイ農業大学(ハノイ市)、乳業会社、大手ゼネコンの5社とMOUを結んで情報交換してきました。今回はさらに防衛省傘下のタイソングループのタイソン社と情報交換と貿易事業やシンクタンク事業などの具体的成果にむけてMOUを結びました。

タイソングループには研究所、病院、高齢者施設など多様な企業群を抱えています。対応する日本企業の情報を提供していきたいと思います。














農村にはタテワリがないはず・・農村にある資源が連携する構図


農村には牛がいて牧場があり、林や森があり、お米や野菜が作られています。その担い手は林業者や酪農業などの事業の特徴ごとにジャンル分けされますが、農村の生活が分けられていません。そこで、資源を横断的に有効利用して、最大の利益(農村にとって)で地域に雇用が生み出せるはず。と考えて、森のエネルギー研究所の大場社長と相互に情報を共有して地域づくりを活発化させようと意気投合しました。

木質バイオマス、畜産バイオマスなどいろいろな呼び名がありますが、地域に熱と電力を生み出して活用することにおいては何の垣根もありません。農村にあり活性化につながるモノは何でも使う、そのための知見の集積です。

このような志の事業体が集結できると地域におもしろいことがおきます。


 笑いがひきつっている菊池
http://www.tokachi.co.jp/news/201601/20160126-0022833.php

2016年1月16日土曜日

バイオガスが夢見る地方創生

バイオガスプラントは農村資源を循環させて、地域に雇用をとどめるための優秀なツールです。
耕畜連携・・邪魔な畜産糞尿を嫌気発酵させて液肥にすることで畑作農家の化学肥料を低減することができるので、糞尿処理コストと畑作での化学肥料購入コストが下がります。
健康な牛・・消化液を利用した牧草は牛の健康を維持すると評判です。乳脂肪分の向上や薬品利用の減少、お産回数の増加などに効果が見られます。粗飼料の収量もアップします。
環境保全・・消化液散布時の臭気がスラリーの1/4以下に減少します。また、密閉容器で発酵させるため(嫌気性発酵)処理時の臭いもありません。
共同処理・・鹿追町や別海町、興部町のような共同処理型では、小規模酪農家もバイオガスプラントの恩恵に与ることが出来ます。
熱利用 ・・膨大に発生する「熱エネルギー」を利用してハウスや植物工場のエネルギーとして利用することが出来ます。鹿追町ではマンゴー栽培やチョウザメ養殖をしています。
発電事業・・これらの事業の推進力となるのが発電事業収入です。農村で解決しなければならない課題を「ソーシャルビジネス」的に解決、雇用を作ります。

最近の私の講演の最後に利用するイラストです。
酪農家の糞尿→バイオガスプラント→有機肥料散布→有機イチゴ、有機ミルク→熱利用(ビニールハウスなど)での高齢者・障害者雇用→有機農産物販売と商店街振興→大学・研究機関との連携→臭気のない農村での農業観光(ロングトレイル、障害者ツアーなど)

昨年、宝島旅行社、共働学舎、イルピーノ、NPOあうるずと一緒に作成しました。
地域の地方創生計画を実行するためには、観光や六次産業化、デザインブランド、食メニュー開発、バイオマス利用技術を「生業」としているソーシャルビジネス的企業との連携が必要ではないかとのご提案です。

地域毎にこのような地域づくりを考えるコミュニティシンクタンクがあれば行政と住民の連携がすすみます。

社会的課題をビジネス的手法で解決するソーシャルビジネス手法は地域に必要な取り組みだと思います。









家畜バイオガスビジネスの考え方

家畜バイオガスビジネスの考え方

 「家畜バイオガスビジネスプラットフォーム」は農村で処理に困った家畜糞尿処理を行い、有効な消化液を生産する際に出てくるエネルギー(バイオガス、熱)を利用して高齢化、後継者不足、雇用減少など農村地域の課題を解決するビジネス手法を研究する。
 普及啓発・情報交換の段階から、バイオガスビジネスマッチングを進めるプラットフォームと、バイオガスビジネスを推進する事業体の開設に向けた研究会を開設する。

「家畜」という言葉を使用しているのは「農村」を意味している。家畜以外の農村のバイオガス資源もあるが、ここでは食品残渣や生ゴミと区別して農村振興に資する・・という意味で使用した。
「農村」が農業・食品を生産する風上にあり、食料生産をおこなった最終資源としてのバイオガス事業のことを意識している。六次産業化などの食品・農村観光などの商品に加えて「国産食料をつくる苦労の電力」という新しい商品開発である。

また「ビジネス」としているのは、バイオガスを中心に考えられる各種の効果を持続させるためにはボランティアではなく地域の生業として取り組むことを意味している。
地域の資源を地域で使い、雇用を生んでコミュニティを維持していくためのビジネスである。バイオガス事業は地域資源の循環事業であり、プラントは心臓部にあたる。心臓だけの身体が存在しないように、プラント部だけでは地域循環は果たせない。消化液利用や熱利用、農業コントラクターなどの視点が不可欠である。

 家畜糞尿解決や有機農業、六次産業化を進めるための多様な知見と資金確保、運営組織などの農村ビジネスモデルを研究・提案する。

A.バイオガス事業が求められる背景
 1.バイオガスブームの再来
 再生可能エネルギーのうち安定的な電源であるとして畜産系バイオガスへの注目度がアップしている。バイオガスは戦後に何度目かのブームを向かえている。石油ショック後のブームなどエネルギー事情により揺れ動いてきた歴史がある。しかし、エネルギー事情という外部環境により忘れられた技術であるが、近年は固定価格買取(FIT)制度により新しいブームが到来している。
既に鹿追町や士幌町など先駆的な自治体では成功しており、農業分野の課題を解決する手法として導入がすすめられ、北海道では現在は60基以上が稼働している。これらの成功は外部のエネルギー価格の高騰・低廉に依存するモノであってはならない。
地域に生きる農業に不可欠な取り組みとして自発的・自立的に進めることが重要である


 2.バイオガス推進に不可欠な視点
 バイオガス事業は農村で処理に困っている家畜糞尿などの有機廃棄物(バイオマス)を利用して、換金が可能なエネルギーを創出すると同時に、農村で利用されている化学肥料を有機肥料に置き換えることで各分野のコスト低減、労力低減、高付加価値有機農業、六次産業化により地域に活力を与える仕組みである。
高齢化対策  家畜糞尿処理作業の大幅な軽減。
居住環境改善 臭気や地下水・河川への影響軽減。
有機肥料生産 消化液と堆肥の組合せと畑作農家との連携により有機栽培に発展する。
エネルギー  FITにより売電収入が得られ、農業地帯の「裏作電力」となる。
熱利用    ガス燃焼、エンジン廃熱の回収によりハウス栽培など六次化を促進。

 3.バイオガスの多様な可能性と総合マネージメント
 バイオガスの多様な可能性を実現するためには、地域の課題解決に向けた情報共有が重要であるため、全体をマネージメントできる体制が必要である。従来は自治体やJAによる取組みが中心であったが、今後は地域農業と政策を理解した第3極の形成がビジネス的視点で運営する体制が求められる。


4.地域バイオガスビジネスの推進ステップ
コンセンサス形成
 バイオガス事業が地域酪農の維持に大きな効果があることや、地域で生活し続ける農業者の将来像を描くために「地域共通認識」の共有を、酪農家や畑作農家、行政やJAなどと共有。
最適なバイオガス利用のコンサルティング
 家畜糞尿の分布や営農形態により「集中型」「個別型」「組み合わせ」などのプラント技術や売電、自家利用、ガス利用、熱利用などエネルギー利用、糞尿収集・消化液の活用方法などの最適化。
地域ビジネス化に向けた提案・評価
 担い手事業者(売電、糞尿処理、プラント管理)に向けたビジネススキームの提案、政策との連携と補助金の導入、売電ビジネス調査、スマートグリッド調査をおこなう。地域での持続的な経営を実現するビジネスモデル評価をおこなう。
資金調達
 導入部では各省庁のFS調査などを活用し、ビジネス化に対しては「家畜糞尿処理と消化液散布」、FITや地域スマートグリッドによる「売電事業」、熱利用によるハウス栽培など「六次産業化」など対応する各種の制度資金の活用や、金融機関によるプロジェクト・コーポレイト
ファイナンス及びファンドの組成を提案する。
雇用と人材教育
 家畜糞尿処理に発する「家畜バイオガスビジネス」により地域での雇用を確保し、その雇用者自信が地方創生の中核として活躍できるように人材教育を行う。

5.ビジネス化にむけたプラットフォームの形成
 バイオガスの検討会議は1998年に十勝バイオガスプラント研究会、翌年北海道バイオガス研究会が立ち上がっている。主に行政機関、大学と民間企業がバイオガスに関する普及・啓発・情報交換などを目的としている。
「家畜バイオマスビジネスLAB」は一歩進んだビジネス化を目的とした技術導入、組織形態、ファイナンス等について検討する。
・北海道の家畜バイオガスプラントを中心としたビジネス事業を推進するプラットフォーム
・バイオガスを核とした地域ビジネスを検討したい自治体、JA、民間会社、金融機関等
・地域のバイオガスビジネスニーズに対応し、地域特性に応じたビジネスモデル支援

・事務局は北海道バイオマスリサーチが担当