2016年7月11日月曜日

バイオガスブームのあやうさ・・バイオガス電力は農業地域の利益に

バイオガス電力は究極の六次産業品
地域の家畜糞尿を利用するバイオガスプラントは農村地帯の畜産糞尿処理の軽減や地下水や河川汚染を防止し、悪臭をなくすなどの農村で生計を営む条件の改善をはかることができる。その上、嫌気性発酵によりメタンガスを発生させたあとに残る消化液は液体の肥料として稲作や畑作に使用することができる。

16基が廃棄・撤退
近年バイオガスプラントに取り組む理由に「売電」が出てきた。かつては、バイオガスによる売電価格はガスエンジンの修理代にもならないことことから、発電機を装備しないバイオガスプラントも多かった。そのせいとは限らないが、平成21年から22年にかけてバイオガスプラント着工がゼロになり、実験終了、事業撤退などの理由により16基も廃止・撤去されている。

日本の飼養形態にアジャストする難しさ
国内建設業、酪農施設業が中心となりヨーロッパのバイオガスメーカーと提携し、日本での技術を展開しようとしていたが、日本の乳牛や養豚の飼養形態に合わせることはなかなかに難しく、1年以上もしくは数年にわたり実験事業的な状態がつづき修理・改造の連続に体力のないプラントメーカーは撤退を余儀なくされのだろう。

地域の酪農・農業をよく知ることが重要
そのなかでも、成功を収めていったメーカーは、地域農業をしっている酪農機械の設備会社である。ヨーロッパから移入されたバイオガス技術は当初豚糞を中心とした施設であったため、ワラなどの混入に繊細であった。また、廃棄物処理から派生した技術も農業廃棄物の特性を把握しきれず撤去されたプラントもあった。

地域の仕組みの重要性
このような試行錯誤をへて現在北海道には80基の施設があり、現在では安定的に稼働している。海外の技術を地域事情にあわせて改良されていった。「美しい農村」をつくりだす行政施策で取り組んだり、農業者は糞尿処理コスト軽減、スラリーを消化液に変えて有効利用することを目的に取り組み、それを畑作農家が化学肥料低減を目的に消化液散布をおこなうなど地域あげての取り組みが功を奏している。

農村FIT電力事業は究極の六次化製品
このような、地域の仕組み作りからうまれるバイオガスFIT電力は、全国だれでも購入できる六次化製品である。自治体・畜産酪農・畑作などの担い手が連営して作った電力を利用するだけで日本の食料生産や農村の活性化に貢献することができるのだ。農村の道の駅に出かけて野菜を買うことの出来ない人たちも、テレビをつけると農村に貢献することができる。

畜産糞尿のFIT電力の補助金は農村のための収入
税金が投入されて、買い取られるFIT電力の恩恵は日本の農業事情を改善しようとする農村の活動に与えられる。近年、海外ファンドと首都圏大企業の太陽光発電会社、ヨーロッパのバイオガスメーカーの組合せで、畜産バイオガスビジネスを田舎に仕掛けている例が多くなっている。この組合せでは地域農業をしるよしもなく、地域課題の解決とは関係のない発電ビジネスが実行される。また、プラント技術の地域へのアジャストも20年前〜10年前の試行錯誤に逆戻りする可能性さえある。
FIT電力は20年間、税金が投入される買い取り価格が決められているが、そのメリットの受取り手が地域外、国外の事業者になってしまうことに危惧を感じている。畜産糞尿や食品廃棄物などの地域のゴミを工夫して得られるFIT電力の収入は、地域農業者、地域建設業、地域金融機関が参加する「地域電力」の収入として、全国の消費者に購入してもらうことが最重要である。

バイオガス地域システム
高齢化対策や後継者確保、若年新規参入などを推進した地域にとって、労力・臭気・肥料コスト低減をはかり、付加価値・ブランド・収益を向上させるバイオガスは農村みずからの手により考えられ実行されるべきである。農村地域活性化の最後の残された資源である、豊富な有機廃棄物から得られる電力・肥料・ガスを賢くつかって、地域による電力ビジネス、熱利用での雇用確保、化学肥料削減の低コストとブランド力向上に活用する仕組みを作り上げたい。