2012年7月25日水曜日

境界はだれが埋める?


1.将来の絵を保持する地域のチカラ
先ほどジグソーパズルの絵とピースになぞらえましたが、地域の将来像は完成図です。そこに様々な役割(ピース)の方がはまり込んで、完成形に近づきます。
では、この完成図はだれの記憶にあることが良いのでしょうか。それはもちろん住民だと思っています。家畜糞尿からのバイオガスエネルギーも有機肥料による付加価値的農業や、障害者が参画するてまひま農業などの全体図と一緒に語られるべきモノだと思います。

2.コミュニティシンクタンクの意義
役所は信頼性の担保には絶大なチカラを発揮しますが、担当者がすぐ変わるために思いを共有する時間が短く、持続性がありません。
また、隣の課との協調性も難しいこともあり、硬直的になりがちです。
コミュニティシンクタンクは行政と住民の境界、住民団体相互の境界、隣町などの行政界の課題を乗り越えて活動しやすくすることも役割です。


ボランティアの限界とビジネス化


地方ならではのソーシャルビジネスとボランティアの限界

地方においては雇用の場の少なく、社会的な課題は多いのでソーシャルビジネスの可能性は高いと考えることが出来ますが、前述したように地域のムーブメントの多くがボランタリーな活動であり、ビジネス的なハードルは高いといえましょう。

① マーケッティングの視点
人口密度が高い首都圏で議論をしていると「良いモノさえつくれば売れる!」という事が言われます。確かに2〜3kmに何万人もすんでいる都会では購買力が高く、商品は完売し専従者が雇用できる可能性は高いといえます。しかし、地方では購買人口が少ないためにその地域内での販売だけでは、専従者の給料を充足できません。
そのため、広報宣伝、営業などが必要です。ソーシャルビジネスといえども中小企業経営者と同様の能力が必要とされます。最大の営業ツールは社会的課題を解決する「志」です。

② 地域のストーリーを伝えるデザインの視点
ソーシャルビジネス商品である由縁は社会的課題の「ストーリー性」を理解することから始まります。対面販売では、志を伝えることが可能であり、共感・共鳴して購入してもらえます。しかし、消費地から遠隔にある地方の社会的課題の理解と志を販売員に託すことは容易ではありません。
そのために志をつたえるデザインマインドが必要となります。
ソーシャルビジネスにおいてデザインは基盤整備であり、それぞれの担い手が独自に人材確保するより、デザインという専門職を共有財産化、基盤整備化するほうが地方においては効率が良いと考えています。


地域づくりの記憶を引き継ぐ


地域づくりボランタリー活動の限界と持続的発展
記憶をひきつぐ
住民と中心となってボランタリーな活動を進めても、地域の中核にいる自治体の協力なしには進みません。プロジェクト初期段階では自治体の当該部署の方と連携がとれているのですが、数年たつと転勤や配置転換があり、役場内でのプロジェクトの記憶が薄くなっていきます。せっかくの活動も10年後には「あったね、その活動!」という事になってしまいます。
地域の課題はいつもほぼ共通なので多少カタチは変わってまた以前とは違う住民と役場担当者の組み合わせで発足します。プロジェクトのスクラップ&ビルドになってしまいます。活動した記憶を蓄積することが必要ですが、それには地域の住民に記憶をひきつぐ仕組みを装置することが重要です。

複合的な活動に展開
以前と異なり、近年の課題は境界が曖昧になっています。当初は景観改善活動であったことが徐々に農村や環境ツーリズムにつながったり、河川環境の水質浄化などの環境課題と連結したり、近年の地域作りは「複合的」になっています。
役場の担当課はそれぞれ境界があります。家畜糞尿は畜産課の担当ですが、バイオマスでエネルギーにすると産業課、流出防止は環境課、液肥利用は営農課など多岐にわたります。複合的な地域課題に対応しようとする住民には企画課、地域振興課などの役場のコーディネイターが重要な役割を果たします。